2025年3月3日(月)
アトピー性皮膚炎の新しい治療「デュピルマブ」
当院では、中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対する新しい治療法として「デュピルマブ(商品名:デュピクセント)」の投与を行っています。
アトピー性皮膚炎の治療には乳児期からの細かなスキンケア指導や治療・病気の理解が重要であり、当院では積極的に取り組んでいます。
アトピー性皮膚炎はもともと体質的に弱い皮膚のバリア機能の破綻↔抗原暴露・炎症・湿疹↔かゆみ・掻破行動↔さらなる皮膚バリアの破綻という悪循環を繰り返していく慢性疾患です。
現在アトピー性皮膚炎は食物アレルギーや気管支喘息・アレルギー性鼻炎などの発症や予後に大きく関与すると考えられています。
アトピー性皮膚炎は皮膚の遺伝子異常など一部は特定されていますが、不明な点が多く、はっきりした原因は長年わかっていませんでした。皮膚の炎症病変に対するステロイド外用薬を中心とするスキンケアが唯一の標準的な治療でした。近年の研究では皮膚炎の詳細な原因の解明が進んできており、それらをターゲットにしたステロイド以外の治療薬が開発されています。
デュピルマブは、皮膚炎に関与する特定の物質(IL-4およびIL-13)の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみを軽減する効果が期待できる生物学的製剤です。
外用薬ではなく、注射薬により炎症を鎮める効果があるため、頻回なスキンケアや強いステロイド外用薬を減量できる可能性があります。
はじめの数回は病院で注射を実施し、慣れてくれば自宅で月1-2回(体重による)注射します。
長期間使用も可能で安全性も非常に高いです。
【特徴】
・皮膚の炎症やかゆみを根本から改善
・ステロイド外用薬だけでは十分な効果が得られない場合に有効
・定期的な皮下注射による長期的な安全性の高い治療法
【対象】
・小学生以上の方で、ステロイドなどの外用療法で十分な改善が認められない中等症以上のアトピー性皮膚炎の方
【方法】月1-2回注射(自宅で自己注射。ただし、初回の数回は院内で注射します。細かな用量・用法は体重で変わります。)
【注意事項】
・生ワクチン接種後は3か月の間隔が必要です
・治療を中断後に再開する場合、お薬の効果が弱まる可能性があります
・副作用として結膜炎や注射部位の腫れ・かゆみなどの報告がありますが、重篤な副作用は少ないです
【治療の流れ】
①電話予約・相談外来
治療開始前に医師による治療適応の判断が必要です。
②導入(数回来院)
③自宅での注射(1-2カ月に1回来院)
【費用】
・東京都では高校生までは医療症により自己負担額が助成されます。
【関連リンク】
・デュピクセントを使用されるアトピー性皮膚炎の患者さんへ(サノフィー) https://www.support-allergy.com/atopy/